VTuber事務所「774inc.」が「ななしいんく」に改名した上で、事務所内にあったグループを1つに統合する、という発表をしました。
最初に見た印象としては、前向きな変更として捉えました。「おー、個人でやりたいイベントできるようになるじゃん!よかったね!」っていう。
しかし、Twitterでフォロワーの皆さんの反応を見てみたら、それはそれはもう、もの凄く荒れておりまして。試しにアンケートを取ってみたところ50%がネガティブに感じているという結果が出ました。
774incのグループ統合の件、どのように感じてる?
— カーリア🔱🍏 (@karia) 2023年3月22日
どうしてこうなったのか、そしてどうすれば良かったのか、色々考えてみました。
目次
グループを推すのか個人を推すのか
ファンからのネガティブな反応が大きくなった要因のうちの1つとしては、774incファンそれぞれのスタンスとしてグループを推していたのか個人を推していたのか、という違いが考えられそうです。
私自身も、「ハニーストラップ」というユニット(グループ)を知ったおかげで774incのVTuberに出会えたんだよな、という事実はもちろんあるし、それがなくなってしまうのは寂しくはあります。
とはいえ、推しのメンバー個人がいなくなるわけじゃない。むしろ、今後伸びていくためのアクションが今回のものでしょう。私個人としてはメンバー個人を推す意図が強かったため、そこまで悲観的にはならなかったです。
「グループ推し」のタイプ分類
さて、比較的ネガティブめなコメントをTwitterにしている人たちの様子をよく観察してみると、おおよそ以下のタイプに分類されるようです。
(あくまで私視点での分類であり、多少誇張が含まれることにご注意ください)
(1) グループごとのストーリーに魅力を感じていたタイプ
今回の変更にあたり、「赤羽にある夜の喫茶店ハニーストラップ」というような、グループごとに存在していたVTuber特有のストーリーがYouTubeの概要欄から綺麗さっぱり削除されてしまいました。このため、特にクリエイターの方でグループのストーリー性に魅力を感じていた人が喪失感を表明する、といったケースが散見されました。
実際のところ、そのストーリーに対する愛着や熱意が、同人誌を作ったり二次創作のゲームを出したりといったアウトプットにつながっていたわけです。私が過去に手に入れた同人誌には『喫茶店としてのあにまーれやハニーストラップを舞台にした二次創作本』が相当数あります。
4日目戦利品(ハニストに関係するもののみ、ポスター除く)でした pic.twitter.com/CzjjBe02Cg
— カーリア🔱🍏 (@karia) 2019年8月12日
そういった文化的背景があったのにも関わらず、「ハイハイ、これは設定だったんですよ~」と言わんばかりにいきなり取り上げられてしまったわけですから、この事実に対しては怒ってもよいでしょう。
(2) 「卒業したメンバーが帰ってくる場所を俺たちが守ってきてたのに」タイプ
過去に卒業したメンバーの名前やスクリーンショットを掲げつつ「俺たちがこの場所を守っていくんだ」と主張する過激派の人たちを今でもTwitterで観測することができます。これらの人たちにとっては、グループの消失はアイデンティティの喪失に他ならない(「ななしいんく」では代替することができない)でしょうから、荒れるでしょうね。
しかも、今回の「全グループ統合」という出来事が実は単一ユニットの統合話を発端としていることが配信などで明らかになっており、この事が火に油を注いだ感があります。こういった内部事情が表に出てきてしまうと、どんなにポジティブな発表をしようとしてもネガティブな方向に逆噴射してしまうので、本当に良くないと思います*1。
ただ、そうは言っても卒業したメンバーにはそれぞれの進路があり、そう簡単に帰ってくる訳ではありません。さすがに4年近く経っても卒業メンバーの復帰に執着するようなツイートは、卒業当時を知っている私から見てもかなりの違和感があったことを書き添えておきます。
(3) グループというものの存在自体に強い愛着をもっていたタイプ
「グループの存在自体が好き」とか「グループのオリジナル曲やイベントが好き」というタイプの方が、ネガティブコメントをしていた人の割合としては一番多かったんじゃないかと思います。
それ自体は理解できるのですが、過激な人になると「●●●(グループ名)の子たちがほかのグループの子と絡むのが本気でイヤ」というガチのユニコーン気質を表明している人もいて、血の気が引く思いがしました。ネタで言うならともかく、明らかに本気と思われる意志表明はあまりにも怖すぎるし、正直にいって同じファンとして一緒くたにされたくありません。
▼2023/03/24追記ここから▼
私はVTuber界隈におけるいわゆるユニコーン発言(男女コラボを極端に嫌がる風潮や発言のことを指します)が大嫌いです。推しの交流の広がりや、ひいては登録者数増加をも阻害する害悪でしかないからです。
そういった発言は、少数の人が言ったとしても、冗談めかして言ったとしても、すぐに「みんなが言っていること」「本当のこと」として面白がられ広まります。一人一人のファンの発言やツイートが、ファンを代表する発言として見られていることを忘れないでください。どうしてもそういう発言をしたいのなら、非公開の場で行ってください。
どうか、推しの未来をあなたの勝手な発言で奪わないでください。お願いします。
▲2023/03/24追記ここまで▲
それで、どうしたら?
ここまで、ネガティブな感情を表明している人にも様々なタイプがいること述べてきました。では、そういったネガティブな感情はどうすればいいのでしょうか。
私個人としては「前を向け!ポジティブなことを書け!!」と言うつもりはありません。しょうがないです。可能であれば一定期間距離を置きましょう。
客観的に見ても、今回のグループ統合により上記のようなタイプの人たちは「切り捨てられた」と言って良いです。これらのタイプの人たちを切り捨てるというデメリットを受け入れてでも、今後来るであろう新規の層を取っていきたい、という意図が今回の発表の根底にあると考えられます。ChatGPTもほぼ同様のことを言っています。
『ななしいんく』統合の件に関して ChatGPT に質問した結果。一部、辛辣な表現もあり。
— いけすのこい (@ikesunokoi) 2023年3月22日
推しが信じる未来を、一緒に信じて応援してあげたい。 pic.twitter.com/96VGAoSjLH
ただ、ファンとしてひとつ留意しておきたいのは、あなたに取っての「推し」はその程度のものだったのでしょうか?ファンが離れていくことでメンバーが悲しまないことはまずありません。過度に批判的な発言をしたり、距離を置くという行為が「運営だけでなくメンバーも悲しませることだ」ということは認識しておくべきでしょう。
「ななしいんく」に今後望むこと
さて、今回のようなある種炎上にも似たネガティブな反応を防ぐために、774incはどうすればよかったのか、という私案をいくつか書いて締めたいと思います。
「グループ統合」ではなく「リニューアルして再出発」を表に出すべき
まず思うのは、今回の発表の出し方、表現が良くなかったですね。
今回の発表って、PRTIMESにプレスリリースまで出してるんですよ。それだけアピールしていきたい意図があったのだと思います。
しかし「グループ統合」と言われても、事情を知らない外部の人には「なんのこっちゃ」って感じなんですよね。774incの知名度がそこまでない状態で統合とか言われても、「なんか……774incってモメてんの?」ぐらいのイメージしかない。
そうではなくて、前向きな変更であることを全面に出すべきだったのではないかと思います。実際、告知文の一番末端にはコーポレートアイデンティティ(CI)を一新したというような感じの画像が載ってるんですよね。画像がポンと置かれてるだけ説明がないので推測ですけども。
そこまで力を入れてイメージを一新したいのならば、
「事務所のロゴとCIを一新しました!その一環としてグループも統合します」
っていう言い方だったら、ポジティブな変更をしようとしていることが一目でわかりますよね。
それが出来ないんだったら、発表から36時間後にグループ統合をするのではなく、「グループ終了に向けての準備期間」を十分に設けるべきだったと思うんです。それこそ「さよならグループ配信」を大々的にやって、みんなの心を切り替えさせればいい。今回の発表は、どちらでもない中途半端な発表になってしまっています。
ただ、個人的には「ネガティブなことでわざわざ泣きたくない」と思います。泣くならポジティブなことで感動して泣きたいじゃないですか。だから、もっとポジティブな発表にするにはどうしたら良いか、という点に拘って欲しかったなと思います。
アウトプットの品質チェックを怠るな
プレスリリースの出し方もそうなのですが、774incのアウトプットって全体的に品質(クオリティ)に疑問を感じることが多いです。
たとえば、今回のグループ統合に際してWebサイトがリニューアルされたのですが、リンクが誤っていたり、タレント紹介のページに別メンバーの画像が掲載されていたりと初歩的なミスが目立ちました。リンクミスはともかく、画像なんて見ればわかるでしょうに。
初歩的なミスはこれだけではなく、統合後最初に出たお知らせが『カラオケの配信動画に不備があった』という発表でした。
【弊社オリジナル楽曲カラオケ配信動画の不備に関しまして】
— ななしいんく公式🍩 (@774inc_official) 2023年3月22日
現在JOYSOUNDにて配信されております、
弊社オリジナル楽曲のカラオケ配信動画に再度不備がある事が判明いたしました。
詳細は添付画像をご確認ください。 pic.twitter.com/uOhINQYyvt
774incをウォッチしているとこういったミスは枚挙に暇がありません*2。ただ、こういったミスが見逃されたままエンドユーザーの元に出てきてしまうのは、クオリティチェックの体制に問題があると言わざるを得ません。クオリティに問題がある状態で世の中に出して良いとした774incに最終的な責任があるのであり、「業務委託先が勝手にミスをしました」では許されないのです。
エンドユーザーとのコミュニケーションするつもりある?
ここまで述べたように774incの運営には様々な問題を抱えていると思いますが、一番の問題点はユーザーが問題を見つけたとしても連絡する窓口がない、ということです。
「ななしいんく」公式のTwitterには「お問い合わせは公式HPより! 」と書かれているのですが、実際に公式HPを開くと法人向け問い合わせフォームか採用窓口しかありません。個人が取れる手段はファンレターか二次創作しか存在せず、どちらも運営宛のものとは言い難いです。
更に、最近になって誹謗中傷についての対応方針が公開されたのですが、この告知にも通報フォームといった類のものはありません。
【774inc.からのお知らせ】
— ななしいんく公式🍩 (@774inc_official) 2023年3月15日
弊社所属VTuberタレントに対する誹謗中傷行為への対応につきまして pic.twitter.com/Lje2MaqTHA
さらに何度も開催しているライブイベントでも、アンケートが実施されることはほぼありませんでした。私が過去に行ったことがあるライブでは終了後にアンケート用紙の配布が定番の流れでしたし、直近ではホロライブがホロライブEXPOのあとにアンケートを広く募っていましたね。
🎊#ひろがるホロライブ🎊
— ホロライブプロダクション【公式】 (@hololivetv) 2023年3月20日
《hololive 4th fes.》
ご視聴いただき誠にありがとうございました!
今後のイベント向上のためアンケートのご協力をお願いします。
皆さんの貴重なご意見、お待ちしております🙌
🔽アンケートはこちら🔽https://t.co/8YRCYN6rLBpic.twitter.com/7IbKP1kP33
現代にはGoogleフォームという便利なツールがあり、アンケートを実施するだけなら超低コストで行えるはずです。
実際にエンドユーザーの意見を採用するかどうかは別として、エンドユーザー向けの窓口を一切設けないという姿勢そのものが、ユーザーの意見を汲み取る気がないと捉えられても仕方のないことだと思います。まずはイベント後のアンケートから始めてみてはどうでしょうか。
追記
この記事を公開した11時間後に、なんと運営へのご意見フォームが公開されました!!
【応援してくださる皆さまへのお願い】
— ななしいんく公式🍩 (@774inc_official) 2023年3月23日
所属タレントへの弊社プロダクションの形態変更に関するご意見はお控えいただけますようお願い申し上げます。
運営へのご意見がございましたら、以下のフォームよりお願いいたします。https://t.co/0LDy3QqBRM
私なんぞの記事を読まれたのかどうかは分かりませんが、とても大きな前進だと思います!がんばって!